シャンパンとホテルとそのあいだのこと

シャンパンとホテルと色恋についてのブログ

デートのススメ

 

 

f:id:greedproject:20180129200340j:plain

 

 ふと思ったのだけれど、デートというのは付き合う前や付き合いたてのカップル(という言い方も古く聞こえるのは承知しているのだけれど、「男女」と書く時代でもないだろうと思い至った。僕の住む渋谷区では同性婚に近い「パートナーシップ証明書」の交付がすでに認められている。よって好き合っている可能性の高い二人を「男女」とは書き難い。とは言え、男女(あるいは男男または女女。ときに男女男または女男女)という補足も煩わしい。よって回帰して「カップル」という名詞を使う。よのなかではどう表現しているのかしらん。)がするものであり、関係が落ち着くとその頻度が急激に落ちる印象がある。例えば、先日、汐留にあるコンラッド東京のラウンジ・バーに夜訪れたのだけれど、他の客たちを見ると友人同士らしき人たちを除くと、先に挙げたような付き合う前や付き合いたて風のカップルが、がぜん多かった。様子から勝手に想像した関係ではあるけれど。あるいは、とても若い女性と彼女の倍以上に歳をとった男性のカップルも少なくなかった。誰と誰がどのようなデートをしたって一向にかまわないのだけれど、言いたいのは、夫婦や長い付き合いのカップルだって、もっとデートをしても良いのではないか、ということである。

 

 しかし、先日、よくしらない街を散策している最中に、小さな中華料理屋さんに入ったときのこと。隣とその向こうの席のふたつ組が老夫婦であった。頼んだ料理や最近あったことについて語り合っている様子はとても良かった。が、これはデートとは言い難い。では、僕の言うデートとはどんなものか。

 

それは、行く前にちょっとでいいのでワクワクすること。そしてちょっとでいいので非日常であること。それが僕の言うところのデートである。

 

 冒頭での付き合う前や付き合いたてのカップルがデートをする姿としてよく見かける理由は、彼らの目的が「会うこと」だからだろう。もちろん会って話すとか親密になるとかその他含めていろいろあるだろうけれど、会わないでいることが普通の状態であり、だから会う理由としてのデートが必要になる。しかし付き合いはじめて一緒に暮らしたり、結婚したりすると毎日顔を見合わせることになる。もう会うためのデートは必要ではなくなるのである。

 

 常々、よく知りたいと思っていることに、フランスやイタリヤのカップルや夫婦たちはどのようにして末永く恋愛の対象として付き合い続けているのだろうか、ということである。まだ良く調べていないが、自分なりにこの件について考えて、思うところは、ある種の不断の努力は必要であるはずだ、ということである。恋とは、手に入りそうで入らない、入らないかも入るかもしれない、いくぶん高嶺の方に感じる可能性から始まる。そこからオブセッションが始まり、ちょっと気が狂う。気を狂わせながら、うまく行ったり行かなかったりして練り進む病的なやり取りである。成就して落ち着いたころには、このオブセッシブな情熱は消えてしまう。それでもなお、カップルが継続的に性の対象としたまま仲良くし続けるには、どうしたらよいのだろうか。これに関して不得手にすぎる日本人としては、特異そうなフランス、イタリアなどのラテン系ヨーロッパ人たちに多く学びたい。おそらく努力と思ってしているわけではない何かがあるように思う。つまり文化化しているはずだと。その文化を学びたく思うのだけれど、未だよく調べてはいない。そこで暫定的な仮説兼試みとして、デートは悪くないではないかと思っている次第である。なう。

 

 さて、個人的な試みはともかくデートである。どんなデートが良いだろうか。ちょっとワクワクして、ちょっと非日常。映画なんてお手軽なデートだろう。しかし映画だけみても今ひとつ物足りない。映画プラスアルファが必要じゃないだろうか。その後バーでちょっと飲んで帰るとか。デートらしくなる気がする。そしてバーに行くなら、バーに来てるね!って実感する格好が良いのではないだろうか。ドレスとかスーツとかは気負いすぎのきらいがあるとしても、ちょっとおめかししたい。ホテルのバーは何かと楽しい。もちろんホテルじゃなくてもどこか良さそうなバーがあるならそこだって良い。

 

 遠出も良いのだが、経験からして、長い付き合いのカップルは遠出すると喧嘩しがちな気がする。いや大丈夫、喧嘩などしない、というのならば、海や山にちょっと行ってぼうっとしてくるのもいいし、アスレチックも良い。嫌いじゃないならキャンプも良いだろう。仲の良さそうなカップルと一緒に行くのも良い。よそのカップルが仲良くしている姿をみると長いあいだ作ってきた自分たちの当たり前が、世間の当たり前とちょっと違うかもしれないことに気がつくから。

 

 場所だけじゃなくて時間の非日常も楽しいものである。早朝の4時や5時からどこかに出かけるのも良い。パレスホテル東京の朝食ブッフェは朝6時から食べられる。皇居の外堀を観ながら、ゆっくり朝食をとるデートも悪くない。6時からなら食べ終わっても8時前だろう。そのまま出社だってできる。

 

 夜明け前の出発といえば、登山も悪くない。しかし登山にもなるとデートというより、そのまま登山と言うことになるだろうか。釣りも然りか。でもふたりでワクワクするなら、どこだって、なんだってデートになるのだろうから良いか。

 

 知らない街をただただ散歩するデートも良い。東京なら広いから知らない街だらけである。時間の非日常感も使えば、たとえ近くとも知らない世界がいっぱいある。休日のオフィス街は静かで趣に近いものがあるし、夜中過ぎの渋谷は若い匂いがするし、同じ時間帯の新宿はちょっとしたカオスがある。

 

 どこにいつ行くのも良いが、目的は相手を楽しませることである。楽しみにしていたイベントが雨や電車の事故でだめになっても、相手を楽しませられたなら、とっても良いデートとなる。天気も映画の良し悪しもお店の店員さんの態度も二の次で、一番は相手が楽しむということである。

 けだし相手がいつもより楽しい気持ちになる、いつもより笑う回数が多くなる、そういう時間をまるっと作る、ということがデートの要諦ではないだろうか。肉屋さんでハムカツを買って食べながら雪道を歩くのも、暖かいお茶かコーヒーをポットに入れて、夜明けの歩道橋の上から車の行き来を観ながらぼうっとして、その辺のベンチで飲み物をちょっと飲み合うのも、なんでも良い。ただ非日常が含まれていると良い。なぜなら、それが普段から一緒にいる人の知らない顔に光をかすかながらも当てるからである。