シャンパンとホテルとそのあいだのこと

シャンパンとホテルと色恋についてのブログ

C1: シャンパンに詳しくなると得をすること

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  1. エグゼクティブと話やすくなる
  2. グランメゾンに緊張しなくなる
  3. 世界が広がり、深くなる
  4. ロマンスが生まれる
  5. 人生を慈しめる

 

1.エグゼクティブと話しやすくなる

 社会的地位が上がってくると会話に上がってくるテーマがある。筋肉とワインである。ゴルフの話がいまだに多いけれど、日本に限った話で、アメリカでは日本ほど一般的ではない。何もアメリカまで圏内に入れなくても良いだろうから、ゴルフはまだまだ大切な共通項として機能していくことだろうけれど、筋肉の話は、国内外けっこう共通した関心の対象である。いぶかしまれるかもしれないけれど、昨今スタイルを良く保つということはエグゼクティブ周りでは重要な資質と見られている。運動が脳、集中力、ストレス耐性に大変役立つこともあり、運動はさらに好まれるようになっている。よって、現代では経営者たちはでっぷりと貫禄ある体型であることは少ない。忙しい最中、経営者たちはいつ運動しているのかというと朝である。都内の高級ホテルのジムやプールには朝五時、六時から走ったり、泳いだりしているエグゼクティブがいっぱいいる。どこのラグジュアリーホテルもたいていジムが充実しているのもそんなニーズを背景にしている。そんなわけで、「困ったら筋肉の話をすれば良い」とどこかに書かれていたのだけれど、その通りで、食事やトレーニングの話は話題が尽きない。

 

 そしてワインである。収入が増えていく人はもれなく忙しい(不労所得はまた別だけれど、それはおいておいて)が、必ずしなくてはいけないことがある。それは睡眠と食事である。睡眠はひとりで行うことだけれど、食事は他者と分かち合える。よって日に数度しか取れない貴重な食事をビジネスや交流の場として利用しない手はない。そこで潤滑油になるのがワインである。ワインに詳しいと社会的に地位が大きく異なっていても、共通の話題で親しくなり得る。

 が、しかし、ワインの世界は広大である。産地は世界中であり、その分、ブドウの品種も無数といっても良いほどある。どこから手をつけて良いかわからないし、いつになったら詳しくなれるのか見当もつかない。

 

 しかしシャンパンはフランスの一地域でしか作られないワインである。さすがに頑張ればそこそこ覚えられる。ブドウの品種は基本的には三種類しかない。その割に、シャンパンが利用される場はとても多い。祝いの場もそうだけれど、食前酒としてリストに必ず載っている。詳しくなってくるとシャンパンのワインリストを見れば、そのレストランの主旨や主義が見えてくる(原価よりどれくらい高いかもわかってくるし、選ぶシャンパンで先進的かオーセンティックか、メーカー寄りか、派手好きか、料理との相性をよく考えているのか等など)。

 それくらい分かってくるとワインに詳しいエグゼクティブたちと会話することにも、それほど困らなくなる。少なくとも、「シャンパンのことなら少し知っている」というは悪くない武器となる。ソムリエでもシャンパンにとても詳しいわけではない方も少なくない。ソムリエのテストにはシャンパンについての問題は1問あるかないかなのである。あなたがシャンパンを多くので少しずつ詳しくなっていくとその辺のソムリエよりシャンパンに関しては多くの知識を獲得できるかもしれない。そんなわけで、シャンパンに詳しいということは、自分より高い地位の人々との会話でとても有効なアドバンテージとなる。

 

 

2.グランメゾンに緊張しなくなる

 グランメゾンに限らないが、普段高級ホテルのレストランなどに行き慣れているかと問われて、イエスと答える人は多くないはずである。そういう方々に向けて書いてるつもりもない。私自身、毎週行っているわけでない。それどころか月に一度くらいちょっと贅沢してみるか、くらいの程度である。

 古くからあるグランメゾンなどは、正直けっこう怖い。壁には高価そうな絵画は飾られているわ、スタッフはみんな怖そうだわ、他の客はドラマで観るような政治家とか財界の偉そうな人々と綺麗なドレスを着た女性たちである。どうも緊張してしまう。しかしシャンパンに詳しいと、ワインリストを開くとそこには同級生のように見知った名前が並んでいることになる。そして先にも書いたが、どんなシャンパンを用意しているかで、そのメゾンがどんな考えなのか見えてくるし、いくらくらいの「粗利」を取っているのかもわかる。そうして緊張もとけてくるし、食事のオーダーもしやすくなる。加えて、たとえばボランジェを頼もうものならば、ソムリエは注ぐときに「これは007でジェームズ・ボンドが好んで飲まれてるシャンパンなんですよ」とウンチクを語ってくれることすらある。あなたがシャンパンに詳しいと、一番最初の007『ドクター・ノオ』では、ドンペリだったし、次作では、テタンジェのコント・ド・シャンパーニュだということも知っているようになる。そんなウンチクでやり返すことは無粋だが、「そうなんですか」と関心した素振りを見せているあいだにずいぶんとリラックスできるようになるはずである。そんなふうに、シャンパンに詳しくなれば、背伸びして行く素敵なレストランを楽しめるキッカケを得やすくなる。

 

 

3.世界が広がり、深くなる

 映画にもシャンパンはよく出てくる。レオナルド・ディカプリオ主演の“The Great Gatsby”には、映画のオフィシャルシャンパンとしてモエ・エ・シャンドンが出てくる。先の007には3つのメゾンのシャンパンが出てくる(ドン・ペリニヨン、テタンジェそしてボランジェ)。「君の瞳に乾杯」という翻訳で有名な『カサブランカ』にはGH・マムが出て来る。このマムは、2015年までF1のシャンパンファイトに使用されていたので、知らずとも目にしている人は多くいるはずだ。アメリカのドラマ『ホームランド』には、ビルカール・サルモンが出てくる。字幕には「高級シャンパン」となっているが、英語のセリフでは「ビルカール・サルモンだぞ」と言っている。と、このようにシャンパンに詳しくなると、いろんなエピソードも楽しめるし、またフィクションを観ていても、作家の趣向や時代背景なども伺えて、存外楽しい。ファッションと同じように何を好んで飲むんでいるかで、その人の傾向も伺えることもある。加えて、ウンチクを(このブログのように)率先して語るか、それとも控えめにして、それでいて造詣が深いか、など性格も見えてくることもある。斯様にして、シャンパンに詳しいというだけで、世界は思いの外、広く深くなる。それもまたシャンパンの良いところだ。

 

 

4.ロマンスが生まれる

 さもありなん、と言わんばかりのありふれた話に聞こえるだろうが、実際のところシャンパンに詳しいことからロマンスは生まれると断言できる。もちろんマナーや異性に対しての配慮といって「前提」もあるが、それでも次に挙げるシャンパンの良き面も手伝って、ロマンスは生まれやすくなる。

 たとえば、シャンパンは、温度やグラスに気を遣うだけで、高級なものを自宅で、自分で楽しむことができる。当たり前に聞こえるが、スティルワイン(泡のない普通のワイン)においては、そうはいかなくなってくる。良いワインになればなるほど扱いが難しくなる。開けてからしばらくおいておく必要があったり、デキャンタといって他の容器に一度あける必要がでてきたりする。所謂グランヴァンと呼ばれる超高級ワインになると、ソムリエに任せないと美味しく飲めないことすらある。その点、シャンパンならさほど専門的な知識や技量を要しない。ちょっと良いグラスを綺麗に磨いて、変な匂いがないかチェックして、ワインクーラーに氷をたっぷりいれて、冷えたシャンパンを綺麗に注げば良い。だから自宅でも楽しめるのだ。シャンパンをあけるのが自宅でも良いならば、1.5倍とか2倍の値段になるレストランより自宅のほうが良くなる。自宅で良いシャンパンを開けるなら、素敵な誰かを呼びたくなる。なぜならシャンパンは、儚いワイン。朝までには飲み干したい酒である。一人で1本あけるというのも味気ない。安くもないから、楽しく誰かと飲みたくなるのが当然である。誰かを呼ぶなら、部屋を綺麗にしたくなる。部屋を綺麗にしたら、自分だって綺麗にしたくなって洗いたての服を着たくなるし、身体も清潔にしたくなる。そしてシャンパンを美しく飲もうとするとキャンドルが必要になる。キャンドルを背景にするとシャンパンの泡がとても美しく見えるからだ。こうしてなんだかんだ言って、シャンパンに詳しくなればなるほど、素敵な誰と共有したいという要求が強化される。そうして小さかったり、大きかったりするだろうが、ロマンスは泡のように生まれることになる。そしてときどきその泡はいつまでも消えないこともある。

 

 

  1. 人生を慈しめる

高価なものを身の回りに置くというのは良いことである。それもできるだけ、儚いものであることが望ましい。食器とかワインとか。シャンパンは高価と言っても、ちょっと頑張るだけで買えるワインである。しかし一度買うと誰かと飲みたくなる。誰かと飲むならば、その人は大切な人が望ましくなる。大切な人と飲むならとちょっと良いグラスが欲しくなる。良いグラスを買うとそれを大切に扱うようになる。綺麗に洗い(ワイングラス用のスポンジがある)、綺麗に拭き(グラスを拭くためのナプキンがある)、大切に保管するようになる。そういうことをしていると、割れても良い安価なものばかり扱っていたときには気づかない「何か」が自分の中に芽生え始めてくる。それは「どうでも良いというものは、あまりないのではないか。身の回りにあるものは大切なものなのではないか」という示唆である。

 またシャンパンの朝は、良いものでも夜開ければ、翌朝の10時くらいには泡がなくなる。それまでの刹那の時間を誰かと大事に過ごしたくなる。時間の大切さを少しずつ学ぶことが出来るようになる。居酒屋だったら三回くらい行けそうなシャンパンを開けるにはちょっとした覚悟がいる。覚悟から私たちは、何かを得ること失うことを実体験を通して徹底して学ぶことになる。何よりもシャンパンの泡が、私たちの人生の有限性を示唆してくれる。シャンパンに詳しくなれば、シャンパンを大切に、それでいて頻繁に開けるようになるが、そうすると日々、時間を、人を、金を大切にすることを身につけることになる。

 

 

そんなわけで、私はこの得すること尽くめのシャンパンについて少しずつここで紹介し続けていこうと思う。

 

 

 

 

最高級ホテルから学ぶこと

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 良質なホテルをなんと呼べばいいのか迷って、これぞそれ!という表現が見つからず、そう言えばむしろ中級に見えそうな「高級」という言葉を使った。という枕をおいてから語るけれど、最高級と呼ばれるホテルは、お金もかかるけれど、学ぶことの多い場所でもあるので、僕はできるだけ訪れるようにしている。

 

 東京には、いくつものの高級なホテルがある。映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台であるパークハイアット。比較的新しいアマン。客室から見える東京湾が美しいコンラッド東京。朝食が楽しいパレスホテル。プールの美しいグランドハイアット。などなど。10前後の「高級ホテル」がある。あなたが多忙なら、1泊で旅行をしたようなリフレッシュができる場所として最適な場所とも言える。僕自身、多忙かどうかはさておき、犬猫を飼っているため、長い旅行が難しいので、都内のホテルに旅行気分で宿泊することが多い。多いとは言え、行き慣れているわけでもなく、行く度に学ばされることが多々ある。そうやって学んできたことについてまとめてみたい。

 

  1. 服装

 宿泊するぶんには、本質的にはどんな格好だって良いのだろうけれど、泊まる側として快適なのは、その場にふさわしい格好でいることである。

 いきなり話が少し飛ぶのだけれど、僕はマンダリンオリエンタルに宿泊したときに、エレベーターの中で、よれよれのAC/DCのTシャツを来た白人の男性にはちゃんと挨拶をされた。そして、連れの女性に対して“After you”と言って、僕も含めて先に降りることを譲ってくれた。その一方で、フォーマルな洋服を身にまとった日本人宿泊客たちからは、ほとんど挨拶をされたり、エレベーターなどの場で彼らが良いマナーをする姿をみることはなかった。だから、本質的には格好より中身である民度の高さのほうが重要ではあると思う。

 が、それは接してみないとわからないから、民度を発する側に我が身をおけば、不慣れが故に、誰をも不快にせず、しっくりとその場に溶け込みたいので、ふさわしい見た目を得たいと思うのである。

 スーツをきっちりと着るべし、ということではないし、高価なブランドでなくてはならないというわけでもないだろう。しかし、ホテルの受付の人、他の客から観て、残念な目で観られたくないという気持ちは矮小かもしれないが、やはりそんな不安などないほうが、こちらとしても快適である。

 その具合やかげんを知るには、ホテルに行って、そこで見かける人たちを観察するのが一番はやい。いろんな国々の人たちがいるから、バランスも取りやすい。結果、私見だが、急にGDPが上がったような国の人々のマナーは、良くないことが多い。ホテル文化に馴染みのある歴史の長い国の人々のマナーは良いことが多い。それはそのまま見た目にも反映される。アメリカだけ例外で見た目はすごくラフなのにマナーが良いことが少なくない。

 すべからくフォーマルにすべきというわけでもない。なんというか雑な言葉を使うと「バランス」が大事といえるのではないだろうか。上手いこと、マニュアルみたいな話にまとめられるわけでもなく、国内外含めてできるだけ多くの「高級ホテル」に泊まっていると、だんだんと「こういう具合かな」という感覚がつかめてくる。するともうひとつ大切な要素が全面にでてくる。それは「慣れ」というか「自信」である。それは、周りに思いの外伝播する。勘違いをしていないのであれば、まわりの人々は、この人はこういう場に属している(人を困惑させるようなことはしない)人なんだなと認識される。こういうことをホテルでは学ぶことができる。

 

 

  1. 態度

 見た目と同じくらいに大事なのこと。ホテルのレストランで給仕してくれるスタッフにちゃんとお礼を都度言うこと。大きな声で「すいませーん」と呼んだりしないこと。声量を調節すること。テーブルマナーをちゃんとすること。服装もレストランではちゃんとすること(ランチはある程度ラフでも良いけれど、ディナーはちゃんとしないといけない)。なぜなら、レストランの方々は、「ここはちゃんとしたレストランです」とお客に思って欲しい。なのに、Tシャツに短パンで来られては、それを見た他のお客たちに、自分がビアガーデンとか居酒屋に来たみたいな気持ちにさせてしまう。態度も然り。なので、ちゃんとしていて欲しい。そしてちゃんとしていると「ちゃんとしてくれてありがたい」という態度を受ける。何人かでホテルのレストランに行くと、スタッフの方は、オーダーの最後に複数のなかで一番ちゃんとしている人を見つめて、「これでよろしいですか?」という伺いの視線を注ぐ。会計もその人のところに置く。彼らは席順からもそれを判断する。なので座る前に席順も考えて置く必要もある。

 ホテルは、他所よりお金がかかるが、金が物を言うとしても能弁ではなく、場所としてはマナーが重視される。たとえスイートルームを借りる常連であっても、バーで騒いだりすればたしなめられる。なぜなら、ホテルは一人の客のために多数を不快にさせるわけにはいかないから。居酒屋だって同じなのだけれど、快適に過ごすために、高い金を払っているというのもある。

 高所得者になればなるほど、マナーを熟知しているかといえば、その可能性は高くなるが、マナーの悪い金持ちもいる。高級なホテルであれば、ホテル側の配慮によって、素行の悪い他の客によって不快になる機会はとても少なくなる。それは逆に、あなたも素行によってはたしなめられるということである。

 ホテルの人も、他のお客に対しても、礼儀や敬意を忘れないでいることが大事ということになる。ホテルでは、そういうことを実地で学ぶことができる。

 

 

  3.自分という人間が大切な存在であること

 ロスチャイルド家のナディーヌ・ロスチャイルドの著書の冒頭にこう断りがあります。「あなたが第一に心を配るべき人は誰か? 父? 母? 伴侶? 子供? おわかりでしょうか? 答えは、あなた自身です」。この自分を大切にするという意識に、我々日本人は、思うにいくぶん不慣れである。しかし、自分を軽視することからはそれほど美しいものは生まれ得ない。「慎ましい」ということと「卑屈」というは意味がもちろんことなるのだけれど、自己軽視というのは、卑屈に近い。先のナディーヌ嬢は、続けて、自宅で自分のために使うティーカップこそ最良の物を使うべきだと記している。自分という存在に敬意を払うことから生まれるのは、人の心を軽んじないほうが良いという実感だろう。どうしたら、自分は快適に過ごせるだろうか、こう考え始めるとうちの中は整理整頓したくなるのではないだろうか。ちゃんと眠るようになるのではないだろうか。美味しいご飯を作って食べたくなる。それも素敵な食器で。ベッドのシーツは清潔にしたくなる。花を飾りたくなる。こういうことを考え、実践するようになると、果たして他者がどうしたら快適に過ごせるだろうかと心を砕きやすくなる。

 良いホテルに行くと、ホテリエたちは、目が合うとにっこりを微笑みを浮かべて、挨拶をしてくれる。頼めば、氷をいっぱい湛えたワインクーラーと綺麗に磨かれたワイングラスを持ってきてくれる。持参したワインが上手く開けられないときには、ソムリエがやってきて頑張って開けてくれる。レストランでは、注文したいなと思って周りを見回すだけで、レストランのスタッフはあなたの視線に気づいて、そっと近づいて来てくれる(だから「すみませーん!」と声をあげられると彼らを傷つけることになる)。ベッドは綺麗にメイクされていて、ベッドサイドにはペットボトルの水が置かれていたり、他にも「喜ばせたい」という思いがいろいろと形になって現れていることがある。

 そういう経験を滞在中し続けることで、人は自分という人間をあらためて、大切に思うようになる。周りから大切にされる実感が、それを容易にしてくれる。高い宿泊費なのだから、至れり尽くせりは当たり前だと思うだろうか。もしそう思うのだとしたら、日頃からその人は自分を大切にするということを実践していないのだろう。先に挙げたような自分の快適さを通して見つける、他者の快適さの追求というものが尊いということを知らないのだ。

 こんなふうにして最高級のホテルで食事をしたり、宿泊したりすることからは、自分を大切することを心地よく学ぶことができる。

 

 4.ドラマ以上のロマンス

 ホテルは口説く場所としては、私見だが、やや恩着せがましい場所に思う。もし誰かを口説くなら、普段自分が良く行く店で(とは言え、ファミリーレストランとかじゃないところ。だって持て成す積りなのだろうから)、身の回りにある素敵だと思う店や食事を紹介するところから始められたい、と考える。ホテルに住んでいるならともかく頑張って行くのであれば、それは「釣った」あとにすべきだ。

 というわけで、最高級ホテルに行くならば、伴侶や恋人と行くに限る。窓からの景色が良いかはわからないが、少なくとも部屋の作りはとてもロマンティックなはずである。天井にはスポットの照明しかない。あとはベッドサイドランプや淡いルームライト、間接照明である。夜はほの暗いほうが人は快適に過ごせるからだけれど、それ以上に高級なホテルというのは、ロマンスを提供する気満々だからである。部屋からバスルームが見える作りのホテルは多い。コンラッド東京では数年前にカップル用に赤いランジェリーをバラの花弁とともにベッドにディスプレイしてプレゼントするという企画もあった。

 ホテルの酔うような雰囲気を利用して、パートナーを素敵な存在として扱う楽しさといったら、クリシェ満載のドラマから得るロマンスの虚構ではないリアルなロマンスを通して、ドラマや映画以上になる。なぜなら、触れることができて、話すことができて、抱くこともできるからである。

 アメニティは、素敵な匂いがするものだし、シーツからはやすっぽい洗剤の匂いはしない(無臭)。

 不思議と音楽を快適に楽しむ用意は、高級ホテルとてないことが多い。グランドハイアット東京はベッドサイドにもスマートフォンを接続できるスピーカーもあるし、テレビのスピーカーも良質なものだった。しかしそんな用意がないところが多いので、ポータブルの良いスピーカーを持参することを個人的にはお勧めする。それからちょっと良いアロマキャンドルもお勧めしたい。

 聞きたい音楽を小さくかけて、良い匂いが部屋に漂い、部屋に続くバスルームでお風呂に入ったり、シャワーを浴びたり、景色が良ければ夜景や夜明けをみたり。それはもう日頃汗まみれで働く二人だからこそ、楽しく過ごせるはずである。愛人とホテルに行く前に、先に、そしてその何倍もまず伴侶と時を過ごすべきに思う。

 

 

 蛇足をつけた気もするが、以上のような理由で学ぶこと多きサンクチュアリである最高級ホテルを強くお勧めする。パークハイアット東京でも安ければ5万以下で宿泊できる。小さな旅行と考えれば、そして学ぶことが多いのだから、ときどき泊まってみることはとても有益なはずだ。それもできれば、何でも無い日に泊まるのがより良い。記念日やクリスマスなども良いけれど、何でもない日にこそホテルに宿泊されたい。何でもない日々こそ大切な人生を形成する最大の構成要素なのだから。